装画と挿絵
(Thu)
Posted in MJ課題



梨木香歩「f植物園の巣穴」の装画と挿絵をイメージして描きました。

異変などありしかば、と、僅かに開いている障子の隙間からちらりと中を覗く。熱心に婦人雑誌を読んでいた。あの熱心さはたぶん身の上相談だろう。その頭が、どうも雌鶏のように見えてならない。

ーーー今、そこで、犬が……。
ーーーああ、また犬になっていましたか。あれは家内です。前世、犬でしてね。忙しくてなりふり構っていられなくなると、戻るのですよ。

風が吹き、波のように打ち寄せる犬雁足。
奥からふらふらと誰かが出てきた。女性である。
ーーー先ほどは失礼いたしました。歯医者の家内です。

私はしばし呆然とこれを見つめていた。そして、ようやくはっとして、その「道」の起点をはっきりさせようと、それに沿って歩き始めた。

犬雁速は跡形もなく抜かれていて、代わりに白木蓮が一本、ぽつねんと立っている。急にそれに気づいたわけはその満開の花ぶりにあった。一体季節はどうなっているのか。

そこまで分かるとぞっとして思わず身を引いた。するとその頭部はぐるりと回転した。ぎょろりとした眼玉がこちらを見た。
ーーー落ちたのか。
ーーーああ。
ーーーこっちに来い。

ーーーこれが稲荷か?
念の為にカエル小僧に訊く。カエル小僧は困った顔をしている。キツネが答える。
ーーーキツネじゃ。
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